法人税の欠損金の概要
法人の決算が赤字だったとき、「今年は税金がないから申告は後回しでもいい」「どうせ欠損だから雑に処理しても影響は小さい」と考えてしまう会社は少なくありません。
ところが法人税では赤字を将来にどう引き継ぐか、言い換えると欠損金を繰り越して控除できるかが、資金繰りと税負担を大きく左右します。
青色申告という言葉は個人事業主の所得税の青色申告を連想しますが、法人でも青色申告の制度は極めて重要です。
青色申告の特典はいろいろありますが、特に欠損金の繰越控除は重要な項目の一つです。
ただし、青色申告は「選ぶだけで得をする制度」ではありません。
承認申請、帳簿の整備、期限内申告の継続といった手続の積み重ねが前提になっており、どこかで躓くと欠損金が思った形で使えなくなることがあります。
目次
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欠損金とは何か
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欠損金の計算単位と管理
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欠損金の繰越控除
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欠損金の繰越控除の仕組み
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繰越できる期間
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控除の基本ルール
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控除限度額
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欠損金の繰戻しによる還付
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欠損金と他の別表のつながり
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税務調査、更正等が欠損金に与える影響
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まとめ
欠損金とは何か
法人税の所得金額は、その事業年度の益金の額から損金の額を控除して計算します。
欠損金は、この所得金額の計算で、損金の額が益金の額を上回る場合に生じるマイナスの金額です。
会計上の当期純損失が存在しても、法人税法上は益金算入や損金不算入などの税務調整を経て所得金額を算定します。
このため、会計上の損失と欠損金の金額は必ずしも一致しません。
この差異は、法人税申告書の別表四の加算減算し、別表五(一)で翌期以降も把握します。
欠損金が生じた場合に、その欠損金を将来の所得金額から控除する制度が欠損金の繰越控除、
一定の場合に前事業年度へ繰り戻して法人税の還付を受ける制度が欠損金の繰戻しによる還付です。
欠損金の計算単位と管理
欠損金は、事業年度ごとに発生し、事業年度ごとに管理します。
欠損金の明細は通常別表七(一)に記載し、いつの事業年度に発生した欠損金なのか、残高と控除状況、残りの繰越可能期間を把握することができます。
欠損金が複数年度にまたがって残っている場合は、古い年度に発生した欠損金から順に控除していきます。
欠損金の繰越控除
繰越欠損金は損失が発生した年度に青色申告の承認を受けていることが前提ですが、その後の年度で白色申告に変更した場合でも繰越控除の適用を受けることができます。
ただし、欠損金が生じた事業年度後連続して確定申告書を提出し、かつ欠損事業年度の帳簿書類の保存が必要となります。
税務管理や損失の正確な把握の観点からも、青色申告を維持することが望ましいです。
欠損金の繰越控除の仕組み
繰越できる期間
欠損金は、無期限に使えるものではなく、一定の繰越期間の範囲内で将来年度に持ち越して控除できます。
繰越期間は税制改正で変わることがあり、欠損金が生じた事業年度の開始日などにより、どの年数が適用されるかが決まります。
異なる制度時期の欠損金が同時に残っている場合は、失効するタイミングも欠損金ごとに異なるため、発生年度の特定と期限管理が必要となります。
現在は10年間繰り越すことができます。
控除の基本ルール
繰越欠損金は、当期の所得金額を上限に控除します。
欠損金を控除した結果、当期所得をマイナスにする形の控除は行いません。
使い切れない欠損金は、繰越期間の範囲内で翌期以降に回ります。
この控除は、税額から直接差し引く税額控除ではなく、課税所得の計算の途中で所得金額を減らします。
欠損金控除後の課税所得を基礎として法人税額を計算します。
控除限度額
欠損金の繰越控除には、法人の区分によって、当期所得に対して控除できる上限が定められています。
中小法人等に該当するかどうかは、法人税法の定義に従って判定します。
中小法人等は所得金額を上限として、繰越欠損金を控除することができます。
中小法人等に該当しない法人では、当期に黒字が出ても、その所得の一定割合までしか欠損金を控除できません。
現在、中小法人等以外の法人の繰越欠損金の限度額は、繰越控除前の所得金額の50%となっています。
欠損金の繰戻しによる還付
欠損金が生じた場合に、その欠損金を直前事業年度に繰り戻して前期に納付した法人税額の還付を受ける制度です。
青色申告書を提出する法人の欠損金の繰戻しによる還付の場合次の要件をすべて満たさなければなりません。
(1)還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までの各事業年度について連続して青色申告書である確定申告書を提出していること。
(2)欠損事業年度の青色申告書である確定申告書をその提出期限までに提出していること。
(3)上記の(2)の確定申告書と同時に欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出すること。
この制度は、中小企業者等以外の法人の平成4年4月1日から令和8年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額については適用しないこととされていますが、中小企業者等以外の法人であっても、清算中に終了する各事業年度の欠損金額など一定の欠損金についてはこの制度を適用することができます。
欠損金と他の別表のつながり
欠損金の繰越控除や繰戻還付は、申告書上の所得金額、欠損金明細、税額計算の整合性が重要です。
別表一、別表四、別表七(一)などは数値が連動しており、期首の繰越欠損金残高、当期発生欠損金、当期に控除した欠損金、期末の繰越欠損金残高が、申告書全体でつながっている必要があります
税務調査、更正等が欠損金に与える影響
欠損金が計上されている事業年度について更正や決定が行われ、所得金額や欠損金額が動くと、その後の年度の控除額、繰越残高、失効のタイミング、税額計算など、その欠損金を使っていた後続年度の申告にも影響が及びます。
このため、欠損金がある法人では、欠損金が発生した年度の申告内容の根拠資料を繰越期間にわたって追える形で保存し、後続年度の別表七(一)などを修正後の欠損金額と一致させる必要があります。
期限後に修正申告や更正の請求により欠損金額が変わる場合も同様に繰越残高の再計算と申告書間の再連動が必要となります。
まとめ
欠損金が生じた場合、青色申告の承認申請を適切な期限で提出し、帳簿を整え、各事業年度の確定申告書を期限内に提出し続けることで、欠損金の繰越控除という形で将来の税負担を抑えることができます。
一定の場合には、欠損金の繰戻しによる還付という形で、過去の納税をキャッシュとして取り戻せる可能性もあります。
一方で、期限後申告や帳簿不備があるときはこの制度を最大限に生かせない可能性があります。
黒字、赤字関係なく常に日々の会計から申告書の作成までを丁寧にやれる会社が、黒字に転じたときに欠損金の恩恵を最大に受けることができます。