損金にならない引当金
決算では、将来発生しそうな費用や損失に備えて引当金を計上することがあります。
会計では非常に有効な処理でも、法人税の計算ではそのまま損金になるとは限りません。
それは、会計上の引当金と、法人税法上の損金算入の考え方や目的が全く異なるためです。
引当金計上について
引当金は、将来の特定の費用又は損失で、発生原因が当期以前にあり、発生可能性が高く、金額を合理的に見積もれるものについて当期に計上する会計処理です。
しかし税務では見積りを広く認めると、恣意性が強くなり同じ事実でも法人ごとに損金額が変わってしまいます。
そのため法人税法では、引当金を原則として損金不算入とし、例外として一部認める仕組みとなっています。
税務上の考え方
法人税法22条3項は、各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される、その事業年度の収益に対応する売上原価、その事業年度に生じた販売費・一般管理費その他の費用、その事業年度に生じた損失について定めています。
その事業年度に帰属する費用や損失が損金の額に算入されるため、法人税法52条の貸倒引当金など一部の引当金を除き、まだ発生が確定していない将来の費用は対象外となります。
損金にならない引当金
代表例は賞与引当金です。
従業員に対する賞与の支給見込額を決算で計上しても、年末時点で個々の支給義務や金額が確定していない限り損金になりません。
実際に債務が確定した未払賞与は賞与引当金ではないので取り扱いが異なります。
退職給付引当金も同様です。
将来の退職金支給に備えて計上してもそれは将来の支出見込額のため、個別の退職により支給義務が確定するまでは損金になりません。
将来保証対応が起こる可能性に対して積み立てる製品保証引当金や、大規模修繕の必要性に備える修繕引当金も、上記同様まだ具体的な債務が確定していないため損金不算入となります。
損金算入が認められる引当金
例外的に貸倒引当金は一定要件のもと損金算入が認められています。
法人税法52条は、一定の法人が、期末に有する一定の金銭債権について、法令に従って計算した繰入限度額の範囲で、損金経理により繰り入れた金額を損金算入できるとしています。
おわりに
引当金と似たような処理で未払費用がありますが、未払費用は期末までに債務が確定しており支払が終わっていないもので、引当金とは異なります。
引当金として整理した後、決算で計上したものが税務上損金になるか、税務調整が必要な引当金なのか、損金算入が認められる引当金の場合、損金算入限度額の計算が重要となります。
以前はいくつかの引当金も一定の要件で損金算入できましたが、税制改正により範囲が狭められ現在は貸倒引当金や返品調整引当金(平成30年改正で廃止され現在経過措置の期間中)などごく一部の引当金しか認められなくなりました。
発生可能性が高い将来の費用又は損失の見積もり計上なので会計上認識することは非常に意味のある処理ですが、税務上の損金とは取り扱いが異なることに留意してください。
免責事項
本記事は2026年4月時点の法令・通達に基づく一般的な解説です。
引当金の損金算入可否は、引当金の種類、事実関係、会計処理、申告内容によって結論が変わります。
実際の処理や申告にあたっては、最新の法令・通達を確認のうえ、顧問税理士等の専門家にご相談ください。