法人税法上の貸倒引当金

query_builder 2026/03/23

売掛金や貸付金が増えると、決算で回収不能リスクを考える必要があり、これを貸倒引当金といいます。

ただし会計では貸倒引当金を計上していても、法人税ではその全額が損金になるわけではありません。

損金算入できる法人、対象となる債権、繰入限度額が定められています。

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貸倒引当金で注意が必要な理由

貸倒引当金はまだ貸倒れが確定していない段階で、将来見込まれる損失を見積計上するものです。

会計では広く使いますが、税務では見積りのまま損金にすることはできず、損金算入できる範囲が限られています。

そのため、会計上の貸倒引当金と税務上の損金算入限度額が一致しないことがあります。

売掛金が多い会社、貸付金や未収金が多い会社、資金繰りの厳しい取引先を抱える会社では、税務上の損金算入限度額の計算方法、会計上の貸倒引当金の計上額と損金算入限度額との差額に注意が必要です。


税務上の位置づけ

法人税法上の貸倒引当金は、法人税法52条で定められています。

一定の法人が、期末に有する一定の金銭債権について、法令に従って計算した限度額まで、損金経理により繰り入れた額を損金算入できるという内容です。


ここで重要なのは、第一に、制度を使える法人が限られていること、 第二に、会計上の見積額ではなく、税法上の計算額が上限になることの二点です。

具体的な対象債権や限度額の計算は、法人税法施行令96条以下と法人税基本通達で補足されています。


損金算入できる法人の範囲

貸倒引当金を税務上損金算入できる法人は限定されています。

銀行、保険会社その他の一定の法人についても認められる取扱いがありますが、一般的には中小法人等が対象です。

反対に大法人では、会計上貸倒引当金を計上していても、税務では損金不算入となる場合があります。

まず自社が法人税法52条の適用対象法人に該当するかを確認することが必要となります。


一括評価金銭債権の考え方

一括評価金銭債権は、期末に有する一般の金銭債権をまとめて評価する考え方です。

すでに個別評価すべき事情がある債権を除く、売掛金、受取手形、貸付金、未収金などが対象となります。

一括評価金銭債権の繰入限度額は、次の算式で計算されます。


一括評価金銭債権の繰入限度額 = 期末の一括評価金銭債権の帳簿価額合計 × 繰入率


この繰入率には、貸倒実績率を使う方法と、一定の法人が使える法定繰入率を使う方法があります。


貸倒実績率の具体的な計算方法

貸倒実績率は、過去の実績にもとづいて算定します。


貸倒実績率 = 過去3年内に開始した各事業年度の貸倒損失額等の合計額 ÷ 過去3年内に開始した各事業年度末の一括評価金銭債権の帳簿価額合計額


ここでいう貸倒損失額等は、単純な貸倒処理額だけではなく、回収額や補てん額など一定の調整を加えた金額で計算します。

したがって、会計上の貸倒処理額が分子にはなりません。

まず過去3期分の一括評価金銭債権残高を確定し、次にその期間の貸倒れに関する損失額等を政令ベースで集計し、その比率を当期末残高に掛ける流れになります。


法定繰入率

中小法人等など一定の法人は、貸倒実績率に代えて法定繰入率を使える場合があります。

法定繰入率は事業区分ごとに決まっています。



事業区分

法定繰入率

卸売業・小売業

10/1000

製造業

8/1000

金融業・保険業

3/1000

割賦販売小売業等

13/1000

その他の事業

6/1000


法定繰入率は過去実績の集計がなく計算が楽ですが、適用できる法人が限られます。


兼業している場合は、主たる事業に該当する事業区分の法定繰入率を使用します。(措置法関連通達57の9-4)


個別評価金銭債権の考え方

個別評価金銭債権は、回収に強い不安がある特定の債権を債務者ごとに評価します。

具体的には法人税基本通達9-6-1から9-6-3に当てはめて考えていきます。


1 基本通達9-6-1

更生計画認可の決定等に準ずる事由があるかで判断します。

会社更生、民事再生、特別清算などの法的整理だけでなく、これに準ずる私的整理で、合理的な再建計画にもとづき弁済条件の変更が行われている場合も対象となります。

ここでは、担保や保証などで回収できる見込額を差し引いたうえで、その事由が生じた日以後5年以内に弁済される見込額を除いた残額が繰入限度額の基礎になります。

単に支払を待っているだけでは足りず、再建計画や合意内容が確認できることが必要です。


2 基本通達9-6-2

会社更生法等の申立て等に準ずる事由があるかで判断します。

破産、民事再生、会社更生、特別清算の申立て、手形交換所の取引停止処分などが対象となり、これらに準ずる重大な信用悪化事由がある場合も含まれます。

ここでは、債権額から担保処分見込額や保証履行見込額を控除した金額を基礎にし、原則としてその50%相当額が繰入限度額になります。


3 基本通達9-6-3

債務超過の状態が相当期間継続し、その営む事業に好転の見通しがないケースです。

単年度の赤字や一時的な資金難ではなく、債務超過が続いていること、業績の改善材料が乏しいこと、実質的に回収が難しいことを客観資料で示せるかが重要となります。

ここでも、債権額から担保や保証などによる回収見込額を控除した残額を基礎にし、原則としてその50%相当額が繰入限度額になります。


対象債権の見方と注意点

貸倒引当金の対象は、基本的に金銭債権で、前払費用や棚卸資産の評価減は対象外となります。

科目名ではなく、実態として相手方に金銭の支払義務があるかで判断します。

また、一つの債権を一括評価と個別評価両方の対象にはできません。

一般債権は一括評価、回収懸念が具体化した債権は個別評価という形で分けます。


申告実務で注意すべき点

まず、自社が貸倒引当金の損金算入を使える法人かという点です。

対象外であれば、会計上の計上額は税務上加算になります。

次に、貸倒引当金は損金経理が必要であるため、決算で貸倒引当金として処理していることが前提です。

さらに、一括評価金銭債権と個別評価金銭債権を区分し、期末残高、担保、保証、弁済計画、債務者の状況を整理しておく必要があります。

個別評価金銭債権は資料が弱いと否認につながりかねません。


おわりに

法人税法上の貸倒引当金は、会計の見積りで計上した貸倒引当金をそのまま使うことはできません。

法人税法52条、施行令、基本通達に沿って、適用できる法人か、対象債権か、どの計算方法を使うかを順に確認し、損金算入限度額を計算する必要があります。

売掛金や貸付金が多い会社ほど、期末直前ではなく、日頃から債権管理を整理しておくことが重要となります。

残高の把握、回収状況の確認、未回収の債権の年齢、相手先の信用状況の記録などから、どの評価をすべきか判断を進めてください。



本記事は一般的な情報提供を目的として作成しています。

具体的な税務判断は会社の規模、資産の内容、契約形態、事業供用の時期など個別事情で結論が変わりますので実際の適用にあたっては最新の法令、通達、申告書の手引きを確認のうえ税理士などの専門家へご相談ください。

なお本記事の内容を利用したことにより生じた損害について当方は責任を負いかねます。

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