役員報酬の税務上の基本
中小企業では、社長=株主であることが多く、利益に応じて役員報酬を恣意的に変更することも可能なため、税務上役員報酬を損金とするためには一定の制限があります。
・従業員への給与:原則として損金(経費)になる
・役員への給与:原則として損金不算入(経費にならない)ただし、一定の要件を満たす場合に限り、例外として損金算入が認められる
ここでは、役員報酬の基礎知識について記載いたします。
目次
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税務上の「役員」とは誰か
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役員への給与はなぜ「原則損金不算入」なのか
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損金算入が認められる役員報酬
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定期同額給与
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定期同額給与を変更できるタイミング
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事業年度開始から一定期間内の改定
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臨時改定事由がある場合
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業績悪化による減額
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事前確定届出給与
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届出の提出期限
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支給時の注意点
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過大役員報酬の否認
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役員報酬が否認された場合
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おわりに
税務上の「役員」とは誰か
法人税法上の役員は、法人税法第2条15項で、
「法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法人の経営に従事している者のうち政令で定めるもの」と規定されています。
政令で定めるものとは、肩書が役員ではなく「顧問」「相談役」「使用人」でも、実態として経営に従事し職務執行に関する権限を持つ者のことで、該当する場合税務上「役員」として取り扱われます。
役員認定されると、その者への支払いは従業員給与ではなく「役員報酬」となるので、損金算入要件に注意が必要です。
役員への給与はなぜ「原則損金不算入」なのか
法人税法では、役員に対する給与は原則として損金不算入です。
これは、役員は会社の意思決定側であり、報酬額を操作しやすく、利益が出た期だけ増額・赤字の期は減額など、利益調整が容易であるなど恣意的な要素を持ちやすいためです。
そのため、役員報酬の損金算入には一定の要件が定められています。
損金算入が認められる役員報酬
法人税法上、役員報酬が損金算入されるのは原則として次の3つに限定されます。
①定期同額給与
②事前確定届出給与
③利益連動給与(上場企業等を想定した制度で、中小企業は対象になりにくいので本稿では割愛します)
中小企業の大半は①と②が中心のため、役員報酬を経費にするには、毎月の月額報酬は「定期同額給与」、役員賞与は「事前確定届出給与」というように、支払いの性質ごとに型を合わせる必要があります。
定期同額給与
定期同額給与は経営者の方であれば耳にしたことがあると思います。
1か月以下の一定期間ごとに、同額で支給される、2つの要件を満たすもので、「月額の役員報酬」は、通常ここに該当します。
また、「同額」とある通り期中に金額が変わると、原則として「定期同額給与」としての取り扱いから外れ、一番低い金額を超える部分が損金不算入となり得ます(※変更が許される例外は後述)。
定期同額給与を変更できるタイミング
役員報酬はまったく変更できないわけではありません。
ただし、「いつでも自由に変えられる」のではなく、定期同額給与として損金算入を維持するための変更時期・変更理由が限定されています。
事業年度開始から一定期間内の改定
最も一般的な改定枠が、事業年度開始の日から3か月以内に行う改定です。
この期間内であれば、増額・減額ともに改定後の金額で毎月同額支給を継続することで、定期同額給与となります。
株主総会決議(または取締役会決議等、会社の機関設計に応じた決議)を行い、議事録等で改定根拠を残します。
臨時改定事由がある場合
上記以外の期中改定が許され得るのは、たとえば「役員の職制上の地位の変更」「職務内容の重大な変更」といった「臨時改定事由」に該当する場合です。
ここで注意すべきは、「利益が出そうだから増やす」「資金繰りが心配だから下げる」といった事情は、期中改定が認められる理由になりません。
業績悪化による減額
役員報酬の減額は、制度上まったくできないわけではありません。
経営状況の著しい悪化は期中での改定事由に該当します。
ただし、単なる予測のブレや短期的な資金繰り事情は、著しい経営状況の悪化には該当しません。
事前確定届出給与
定期同額給与以外で損金算入が認められる代表例が、事前確定届出給与です。
これはあらかじめ税務署へ「支給日」と「金額」等を届け出て、その届け出どおりに支払う役員給与をいいます。
中小企業では、役員への賞与的なものとして使われることが多いです。
届出の提出期限
事前確定届出給与は、内容だけでなく提出期限も非常に重要です。
届出の提出期限は次のいずれか早い日となります。
・事業年度開始から4か月以内
・株主総会等の決議日から1か月以内
期限を経過すると事前確定届出給与は支給することはできないため、
「決算前に利益が出たので役員にボーナスを出したい」ということはできません。
概ね期首から3か月弱が提出期限なので、それまでに当期の予測を立て、現実的な金額設定が必要となります。
支給時の注意点
届出書には、支給対象となる役員、 支給日、 支給金額が記載されています。
最も気を付けないといけないことは、支給日や金額が届出と異なると、原則としてその支払いは事前確定届出給与に当たらず、損金不算入となることです。
例えば100万で届け出たが、思ったより利益が出なかったため50万で支給したら、50万すべてが損金不算入となります。
また、支給日が土日だと金融機関の関係で届出と異なる可能性が出るので、より確実にするために平日に設定したほうがよいです。
過大役員報酬の否認
役員報酬は、定期同額給与や事前確定届出給与の形式を満たしていても、過大役員報酬(不相当に高額な部分の否認)と判断されるケースがあります。
形式的には「株主総会で決めた役員の報酬の上限額」を超えて支給していないかで判断されます。
実質的には、その報酬が妥当かどうか、職務内容、責任の重さ、 法人の規模(売上・利益・従業員数等)、 同業同規模法人の水準を基礎に客観的に判断されます。
過大と判断された場合、過大とされた部分が損金不算入になります。
役員報酬が否認された場合
定期同額給与や事前確定届出給与の要件を満たさなかったことにより、役員報酬が損金不算入になったとしても、役員報酬そのものが減額されているわけではないので、役員個人の所得税には影響はありません。
法人税側では経費にならなかった=法人税等が増えたにもかかわらず、個人側では支給額で所得税(住民税、社会保険)は計算されているので、ロスは大きくなります。
おわりに
役員報酬は会社の資金繰りや社長個人の生活と結びつく一方で、法人税法上は損金算入の要件が明確になっており、変更時期や届出が要求される規制の強い項目になります。
特に事前確定届出給与は要件を理解した上で上手に使えば、法人側にも個人側にも非常に効果の高い制度となっています。
定期同額給与の設定、将来予測を見据えた事前確定届出給与の検討など、役員報酬で迷ったときは税理士にご相談ください。