法人税の基本的な仕組みについて
法人税は、
・利益が出たら必ず払うもの
・決算が終わってから考えるもの
・節税はグレーで危ないもの
と思われがちですが、実際は少し異なります。
法人税は「日々の経営判断の積み重ねの結果として決まる税金」 です。
目次
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法人税は「売上」ではなく「利益」にかかる税金
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「利益=手元に残るお金」ではない
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法人の利益にかかる税金は法人税だけではない
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中小企業の実効税率はどれくらい?
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「税金を減らすために経費を増やす」は正しいが、万能ではない
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「いつ経費になるか」で税金は変わる
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決算月の考え方が税金に与える影響
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赤字でも税金は生じる
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過去の赤字は将来の利益と相殺できる
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法人税は「決算後」に突然出てくるものではない
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おわりに:法人税を「味方」にする経営へ
法人税は「売上」ではなく「利益」にかかる税金
法人税は売上にかかる税金ではありません。
「利益」にかかる税金です。
利益とは、シンプルに言うと売上 − 経費です。
売上が多くても 経費が多ければ 利益は少なくなります。
逆に、売上がそれほど多くなくても 経費が少なければ 利益は大きくなります。
法人税は、この最終的に残った利益に対して課税されます。
※法人税は利益をベースに計算された所得(法人税法上の利益)に対して課税されますが、ここではあえてわかりやすく利益と表現します。
「利益=手元に残るお金」ではない
ここで、経営者の方がよく混乱するポイントがあります。
利益が出ているのに、なぜお金がないのか?
決算書を見ると利益が出ている。でも、銀行口座を見るとお金が増えていない。
これは、利益と現金は別物だからです。
例えば、 売上は立っているが、まだ入金されていない
高額な設備を買ったが、経費として一度に落ちていない
借入金の返済をしている(返済は経費にならない)
こうした理由で、利益は出ているのに、法人税だけはしっかり発生するという状況が起こります。
だからこそ、「いくら税金が出そうか」を決算前から把握しておくことが重要です。
法人の利益にかかる税金は法人税だけではない
法人の利益に係る税金は法人税だけではなく主に次の4つです。
・法人税
・地方法人税
・法人住民税(県民税、市民税)
・法人事業税
税目を覚えていただくことも有用ですが、大切なのは、「利益が出ると、これらの税金を納める」という点です。
その他、上記利益に対する税金とは別に、消費税や償却資産税など法人に係る税金は多岐にわたります。
中小企業の実効税率はどれくらい?
「結局、いくらぐらい納税をするのか?」
これは社長が一番気になるところでしょう。
目安としての税率 中小企業の場合、利益の約33%前後が、法人税等のイメージです。
・利益 1,000万円
→ 税金 約330万円
→ 手元に残るのは 約670万円
実際は400万円以下、400万円超800万円以下で税率が異なるのでもう少し減りますが「利益の1/3は税金」 という感覚は、経営判断をする上で非常に重要です。
「税金を減らすために経費を増やす」は正しいが、万能ではない
よく「税金を減らすために経費を増やす」と聞くことがあります。
これは半分正解で、半分誤りです。
経費にするとどうなるか
例えば、100万円の経費を使い、利益が100万円減りました。
この場合、税金は約33万円減りますが、現金は100万円減ります。
つまり、100万円使って、33万円の税金を減らす効果しかありません。
単純計算では33万円納税すれば、67万円の現金は残ります。
経費は、税金対策のためだけに使うもの ではなく、事業に本当に必要か、将来の売上につながるか という視点で判断する必要があります。
「いつ経費になるか」で税金は変わる
特に重要なのが、「支出したタイミング」と「経費になるタイミング」は必ずしも一致しないという点です。
高額なものは一度に経費にならない
例えば、
・300万円の機械
・200万円の車
こうしたものは、何年かに分けて経費になります。(減価償却)
そのため、 現金は大きく減ったが、今年の経費は一部だけという状況が起こります。
これを見失った設備投資は、 お金が減ったのに税金は減らないという事態になりがちです。
決算月の考え方が税金に与える影響
法人税は、 1年間の区切り(事業年度) で計算されます。
この「区切り」が、決算月です。
決算月が近づいてから、利益が出すぎていることに気づく、 今からできることがほとんどない、 というケースは非常に多いです。
理想は、決算の3か月前、 できれば半年以上前から、今期の利益見込み、税金の概算を把握し、早めに打ち手を考えることです。
辰巳税理士事務所でも、契約により毎月や3か月に1回打ち合わせをし、特に6か月目、9カ月目、11カ月目の着地見込み、納税予測は非常に大事にしています。
赤字でも税金は生じる
「赤字なら税金はかからないから申告をしなくてもよい」
このように考える経営者の方もいますが、誤りです。
利益がなくても発生する税金に法人住民税(県民税、市民税)の均等割と呼ばれる税金があります。
これは赤字でも法人として事業をしている限り生じます。
一般的には7万円が多いですが、自治体によって税額は様々で、資本金等や従業員数で税額が増えることもあります。
法人税というテーマからは少し外れますが、消費税は赤字でも納税するケースがとても多い税金です。
過去の赤字は将来の利益と相殺できる
法人税には青色申告を選択することで、過去の赤字と将来の黒字と相殺できるという青色欠損金の繰越控除の規定があります。
例えば、
・去年:▲500万円の赤字
・今年:+800万円の利益
この場合、今年の課税対象となる利益は300万円 となります。
白色申告だと赤字は繰り越されることなく▲500万円は切り捨てられ、800万の利益に対して課税されますが、青色申告だとこの赤字は10年間繰り越すことができます。
「青色申告できちんと申告する」ことは非常に重要です。
法人税は「決算後」に突然出てくるものではない
法人税は、決算が終わってから突然発生するものではありません。
日々の経営判断の結果として、少しずつ積み上がっていくもの です。
売上、仕入、在庫、経費、設備投資、これらすべてが、 法人税に直結します。
おわりに:法人税を「味方」にする経営へ
法人税は、できれば納税したくないもの、難しくて分からないものと思われがちです。
しかし見方を変えると、「会社が成長している証拠」、「経営判断を見直すヒント」 でもあります。
法人税の仕組みを少し理解するだけで、お金の残り方が変わる、投資判断が変わる、経営の安心感が変わる はずです。
ぜひ、「税金は税理士任せ」から一歩進んで、 法人税を意識した経営を始めてみてください。